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【スターメディア通信】 2007.4.2.第24号
T. 著者:Al-Biruni(973-1049)
  書名:The Book of Instruction in the Elements of the Art of Astrology

U. 中世のアラビア語の広がり
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T. 著者:Al-Biruni(973-1049)
  書名:The Book of Instruction in the Elements of the Art of Astrology
  訳者:R Ramsay Wright
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 本書は、11世紀のアラビア占星術の根底にある知識と理論を端的にまとめたものです。当時はアストロラーベなどを使用して天体観測を行い、観測結果を元に必要な情報を出して占星術の鑑定を行っていたようです。そのため、この本には占星術のことだけでなく、一連の作業に必要な知識と道具を作成する方法も記載されています。

 アル・ビルニ(アル・ビールーニー)は天文学者、数学者、占星術家として知られています。地理学でも業績がありました。
 アル・ビルニの母語はペルシャ語ですが、研究では当時主流となっていたアラビア語を使用していました。彼はインドのサンスクリット語も読めましたので、インドの数学や天文学の本を研究することができました。

 アル・ビルニはガズナ朝の君主に仕えてインドの遠征に出向き、「インド誌」を残しましたが、この文献は歴史学などで貴重な研究資料になっています。

 インドでは、古代ギリシャの科学が早くから研究されており、天文学や数学が発展しました。天文学の分野より三角関数のサイン(sin)が生まれています。中世のアラビアではインドの数学が盛んに研究され、9世紀にアラビアにおいてタンジェント(tan)が生まれました。その後、球面の三角形にどのように三角法を適応していくのか、研究が進められていきました。球面三角法に挑む歴史は長くなりますが、11世紀はアル・ビルニがその研究の中心的存在となりました。研究は次の世代に引き継がれていき、15世紀頃にはかなり精度の高い天文暦の作成ができるようになりました。

 中世のアラビアの占星術は、ギリシャ占星術をベースにもちながらもエジプト、バビロニア、ペルシャやインドの占星術、アラビア周辺に古くから残っていた占星術の知識も含んでいます。アル・ビルニは8-9世紀の代表的な占星術家アブ・マシャー(アブ・マーシャル)やマシャーラーの占星術も研究していました。その一部は、別の著書”On Transits”の中でも確認することができます。

 アル・ビルニの数学や天文学への深い洞察は、本書の中でも随所ににじみ出ています。アル・ビルニの知的な輝きは、今日でも衰えることはありません。

参考文献:
書名:アラビアの科学の歴史/知の再発見 双書131  出版社:創元社
著者:ダニエル・ジャカール  監修:吉村作治  翻訳:遠藤ゆかり
ISBN:4422211919  2006年12月出版 1575円 
★ これは絶品です。★

書名:「西洋占星術の歴史」    出版社:恒星社厚生閣
著者:S.J. Tester 訳者:山本啓二
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U. 中世のアラビア語の広がり
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 7世紀初めまで、アラビア周辺ではビザンティン帝国(宗教:キリスト教)とササン朝ペルシャ(宗教:ゾロアスター教)の2大帝国が中心的でした。しかし7世紀初頭、マホメットがアラビア半島に登場してからわずか1世紀の間にイスラムの世界は地中海沿岸にまで広がり、その後も拡大し続けました。

 コーランがアラビア語で書かれたことから、アラビア語を学ぶ人が増えました。文法書を編纂する人が登場、8世紀に中国から紙が伝わると書籍や情報は急速に広がりました。アラビア語は長い年月をかけて中世のイスラム世界の主流な言葉となりました。

 このような影響もあり、アル・ビルニのように研究でアラビア語を用いる学者が多数存在しました。ペルシャ語は教養語として定着しており、ペルシャ語による文学書・研究書も多数執筆されました。

 ところで、ヘレニズム期のギリシャ哲学、医学、占星術、科学などは、アレクサンドリアをはじめアラビア周辺諸国に浸透していきました。9-10世紀には多くのギリシャ語の文献がアラビア語に翻訳されています。ちなみにササン朝ペルシャでは、ギリシャ語とサンスクリット語をパフラビー語に翻訳していました。

 ローマ帝国の崩壊により、古代ギリシャの科学や哲学はヨーロッパに引き継がれずアラビアやインドにもたらされ発展しました。その後、ヨーロッパでアラビア語に翻訳された書籍のごく一部をラテン語に翻訳するに至り、中世のヨーロッパの科学の発展の一助となりました。

参考情報:
https://www.uni-frankfurt.de/58601604/IGAIW
 トップページ左下のMuseumをクリックすると、博物館の展示品の写真をご覧になれます。天文学・占星術・建築学・医学・化学など各分野の道具が見られます。

※2017.7.7. ドイツのリンク先が変更されていたため修正しました。この通信配信時とはリンク先が異なります。

参考文献:
書名:アラビアの科学の歴史/知の再発見 双書131  出版社:創元社
著者:ダニエル・ジャカール  監修:吉村作治  翻訳:遠藤ゆかり

書名:イスラーム   出版社:ネコ・パブリッシング
著者:ポール・ランディ  監訳:小杉泰
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★☆★ 編集後記 ★☆★
・ 創元社の「アラビアの科学の歴史」。参考文献に記載しましたが絶品です。

 私事ですが、占星術の世界に入るとき、いくつか目的を持っていましたがその一つがペルシャ占星術の習得でした。2年ほど前にようやくその断片を見つけて、かなり魅了されてしまいましたが、この本の日本での出版は私の中では実にタイムリーで、たいへん良い刺激を受けました。

・ 錬金術が盛んだった時代、彼らは薬品類をいったいどのように処分していたのだろう?と思います。錬金術関連の本を調べても、作ることが主体で、薬品の処分に関する記載は見られません。水銀とかどうしてたんでしょうねぇ。
 もしかすると当時は、あまり意識されていなかったのかもしれませんが、それも確認できない状況では、それすらも断定できません。

・胃腸炎やら風邪やら流行っている模様。今年はいつになく気温が高いので春先の食中毒や感染症が気になります。うがい、手洗い、掃除励行です。

・ それでは皆さん、どうぞ健やかにお過ごしください。
 ☆ 皆さんに良いことがたくさんありますように ☆
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◆次号第25号は2007年5-6月頃にお届けする予定です。◆
 それまでにメールが発行される場合は、臨時増刊号になります。
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スターメディア通信 2007.4.2.第24号
発行責任者 森谷リリ子
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