西洋占星術で使用するデカン(decan)は、10度区分(10分角)のことで、12サインをそれぞれ3等分した区間を表します。デカンは黄道上に全部で36あります。このデカンを支配する天体をフェイス(face)といいます。 デカンとフェイスは、ヘレニズム期のギリシャ占星術の本に出ています。紀元前150年あるいは2世紀の占星術家と言われるアンティオコスは、ギリシャ占星術の著書「シソーラス」の中で、次のように書いています。 サインを3分割した各デカンにある星々によく調和する天体が7つの天体より割り当てられ、その割り当てられた天体が、そのデカンの顔(face)になるのである。 西洋占星術のデカンは、エジプト起源です。私たちはプトレマイオス朝(ヘレニズム期)のエジプトの壁画や天井のレリーフに、10分角のデカンを確認することができます。プトレマイオス朝のデカンは、エジプトの古いデカンとバビロニア起源の黄道12星座が融合したものです。 黄道12星座と融合する前のデカンは、10日間を表す星または星のグループのことでした。古代エジプトでは日の出前に東の地平線の星を観測していました。毎日1度弱ずつ日の出前の星が上昇するのを見て、暦に利用していたのです。このデカンは夜間、時間を計ることにも利用されました。古いデカンはこのような地平線の天体観測が元になっていました。発見された記録だけでも2000年以上この仕組みが使われていたことがわかっています。この古代エジプトのデカンの体系が、今日の西洋占星術の原型作りに深く関与しています。古いデカンの仕組みの詳細、星時計の利用方法などは、私の書いた占星術の起源 太陽と黄金の古代エジプトをお読みいただきたいと思います。私はセティ1世の王墓のデカンのリストを理解する中で、古代エジプトと占星術の接点を見出しました。古代エジプトのデカンの体系を理解するのに必要な西洋占星術の基礎知識と古天文情報を同書の第1章と第2章にまとめました。 2008年3月、私はこのページで間違ったことを書きました。次のものがそうです。 > 紀元前2000年のエジプトでは36星座を使用して、天空を10度ずつに区切っていました。 ↑ これは間違った情報です。 まず、36星座ではありません。36の星または星のグループです。また、古いデカンは10度区分(10分角)ではありません。正しくは、10日ごとに見られる星または星のグループです。 古代エジプト人は、自分のいる場所から星を見て、そのまま利用していました。36のデカンでは360日分しかないので、1年の節目を、シリウスのヒライアカル・ライジングを利用して補正していました。5日と1/4日に相当する閏日の具体的な設定時期は年末と言われていますが、まだ確定的なことはわかっていません。シリウスが1年の節目として利用されていたことは明確にわかっています。この辺りの仕組みを、死者の書に見られる神話や宇宙観とあわせて解説したのが、私の書いた「占星術の起源」です。情報と図が多いこと、体系的に全体を把握しないと理解し難いため、本にしました。ぜひご参照ください。 古代エジプト人の英知が見過ごされて、西洋占星術がギリシャ人の発明だと刷り込まれて、それが業界の主流となっている原因は、簡略化した安易な知識で占星術を把握しようとしたためだと思います。 以前古いデカンが10度区分だと書いたのは、私がある和書と情報をそのまま鵜呑みにしていたからですが、よく考え、古代エジプトについて調べてみると間違いだと気付きました。10度区分は古代エジプトの死者の書や神話とかみ合わないだけでなく、古代エジプトの暦や星時計とも合致しないのです。外に出て、デカンを観測すると大きな間違いだと気付きます。 このほか、調べて気付いたのは、古代エジプトの古いデカンが黄道上の星、あるいは 赤道上の星だと解説したものがあることです。これも不正確な情報です。古代エジプト人を真似て、外に出て星を観ると、これらの情報の間違いにすぐに気付くでしょう。このような一連のことについて、重要な見方、考え方を、「占星術の起源」にまとめました。とてもインターネットで解説できる情報ではないのでぜひ本をご参照ください。 2008年3月27日新規 2010年4月18日更新
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